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こんにちは、mctの池田です。

 

先日、同僚のエリックから面白いクイズを出してもらいました。

 

ある状況で、ゾンビの大群が近づいてきました。

それに気がついた誰かが、隣にいる人に向かって声をかけます。

下記のセリフから、あなたはそれぞれどんな状況を想像しますか。

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(1)「後ろを向いちゃダメ! 大丈夫、手をつないでついてきて!」

(2)「お取り込み中申し訳ありません。ゾンビが後ろから迫ってきております。恐れ入りますが早歩きでお願い致します」

(3)「北北西の方角から、死んでいないホモサピエンスが2.5SPSでこちらに向かってきています」

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(1)は幼い子供の親が、子供を怖がらせずに逃げるため

(2)は秘書が社長に対して、電話を中断させて危険を知らせるため

(3)は科学者が、博士に調査状況を正確に伝えるため

...が本当に正解かどうかはさておき、大事なことは、「コミュニケーションにはいくつかの大切な基本要素がある」ということのようです。

 

・目的(誰に、どんな行動をしてもらいたいか):「不安にさせない」「注意をひく」「正確な情報を伝える」

・内容(伝えたい内容は何か):「ゾンビの大群が近づいてきている」

・表現(相手の立場・能力、状況に合っているか):理解できる、共感できる、活き活きしている

 

誰かとコミュニケーションをとり、何かを伝えたいという時には、これらの要素を意識することが必要です。カスタマージャーニーマップを作る時にも、同じことが言えます。

 

・目的:マップを使って、誰に、どんな行動をしてもらいたい(どんな結果をもたらしたい)?

・内容:そのために、マップにはどんな情報が必要?

・表現:そのマップを見る相手に、直感的にわかってもらえる?

 

これらのポイントを踏まえて、もう少し詳しく、より良いカスタマージャーニーマップを作るコツをお伝えしたいと思います。

 

作る前に、どんな目的で使うためのマップかを定義する

「とにかく顧客の体験を可視化しよう」と、勢いよくマップ作りに取り組むその前に、まず、「具体的にどんな目的で使うため」のマップか、明確に定義しましょう。

 

「どうすれば、不動産店を訪れた新規客に、安心して相談しやすいと思ってもらえるだろうか」

「どうすれば、患者がだんだん億劫になる毎日の服薬を、ポジティブな行動に変えられるだろうか」

「どうすれば、通販サービスに加入して1年後の、飽き始めている顧客に、もう一度ワクワクできる体験を提供できるだろうか」

 

目的が明確になれば、自ずとカスタマージャーニーマップのタイムスパンも定めやすくなります。ある特定のタッチポイントにフォーカスを当ててそこでの詳細な体験を理解したいのか、長期的な視点で全体像を把握したいのか。解決したい問題に沿って適切な範囲設定をすることで、「誰に、どのような形で活用してもらうためのマップか」というメッセージもはっきりしてきます。

 

カスタマージャーニーマップの主人公を明確にする

「カスタマージャーニーマップを作成したい」というご依頼を受ける際、そもそも自社のターゲット像が明確になっていないことがよくあります。ターゲット像がはっきりしていないと、マップで描き出される内容は表層的なレベルに留まり、それを見ても理解、共感できないという問題が起こります。

そうならないために、主人公となるペルソナとセットにしてカスタマージャーニーマップを作ることをお勧めします。カスタマージャーニーマップに描ききれない、ペルソナの人物像、背景、性格、思考の癖はペルソナシートで理解した上で、その主人公が実際に、時系列でどんなタッチポイントでどんな体験をしているかをマップで明らかにします。そうすることで、ひとつひとつの出来事が顧客にとってどのような意味や感情をもたらしているのかがより深く理解できるようになります。

 

顧客の視点から世界を捉える

カスタマージャーニーマップのステップが、下記のように設定されているとしたらどうでしょうか。

 

 入店→席にご案内→注文をとる→料理を出す→会計→出店

 

業務の流れは明確ですが、カスタマージャーニーマップは業務設計書とは異なります。

この一連の流れを、顧客の視点から捉え直してみると、例えば下記のようなステップになります。

 

 店の外観を見て近づく→店の前で混み具合を確認する→入店する→席に案内される→上着と荷物を隣の席に置く→壁のメニューを見上げる→注文する→眼鏡を外す→...

 

カスタマージャーニーマップを作る時は、各タッチポイントで顧客がどんなメッセージを受け取り、どんな気分になっているのか、製品・サービス提供者の立場から離れ、顧客の目線になって体験を捉え直すことが大切です。一連の流れを顧客の目で見てみると、これまでは当たり前で見過ごしてきたことが、実は顧客にとって「なんかちょっとやだな」と感じることの連続だった...といったことにも気づけるようになります。

さらに、顧客の体験を捉えるためには、「結果」だけではなく、「期待」をマップの中に記載することも効果的です。人は何かを体験する前には、意識せずとも何かしらの期待や想定を抱いています。「売り込みされるんじゃないだろうか」「この病院ならちゃんと診てくれるはず」「このお店ならゆっくり過ごせそう」...。こうした期待を捉えることで、実際の体験が、その期待を上回る素晴らしい体験だったのか、想定内のことか、期待外れのがっかりする体験だったのかが明確になります。さらに、そのギャップの大きさから、体験全体に影響を与えるような重大なペインポイント(あるいは満足度を上げているポイント)がどこにあるのかが把握しやすくなります。

 

顧客体験に影響を与えるバックステージにも目を向ける

本当に顧客体験をよくしようとすれば、顧客と直接接するフロントステージだけではなく、それを支えるバックステージにも目を向ける必要があります。

例えば、不動産店で家を紹介してくれた担当者は自分に対してとても親身になり、決断を熱く後押ししてくれたのに、後日、経理部門から何の気持ちも感じられない事務的な振込用紙が1枚送られてきたら、どう思うでしょうか。顧客から見て一貫性のない体験は、顧客に不安、不快、不信感といったマイナスの感情を与えてしまいます。顧客との関係が直接ない部門であっても、顧客の体験のどこかに影響を与えています。フロントステージだけではなく、バックステージの動きもカスタマージャーニーマップに加えてみてください。そうすることで顧客体験を良くするための全体像が見えてきます。

 

いかがでしたでしょうか。顧客の目線で体験を捉える練習としては、自分自身も"ひとりの顧客"として、世の中の優れた製品・サービスを積極的に体験してみることをお勧めします。だいぶ暖かくなって、活動しやすい季節になってきましたので、ぜひいつもよりちょっとだけ意識的になって、いろいろな体験にトライしてみてください!

Eiko Ikeda
Eiko Ikeda

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー

01 March

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、101メソッドの中でビッグピクチャーとして使えるものをご紹介しましょう

 


Summary Framework(サマリーフレームワーク)

人々やコンテクストの深い理解に基づくインサイト、デザイン原則を1つにまとめるために分析の最後に用いる構造化のメソッドで、サンダース教授の「ビッグピクチャー」がこれにあたります。

形態に関わらず、優れた「サマリーフレームワーク」「ビッグピクチャー」は以下の性格を持っています。作成する際は、これらの項目をチェックリストとして使いながら表現するとよいでしょう。

・あるテーマを完全かつ包括的に表している

・詳細は割愛し、全体レベルの情報のみを示した概略である

・全体レベルの情報は詳細レベルの情報を内包している

・あるテーマの要素間の関係を示す構造を表す

・通常は図表を使って、ひとつの形状で表される

・コミュニケーションを促進し、モードの移行をサポートする

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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』186ページ

 

User journey Map(ユーザージャーニーマップ)

Customer Journey Map(カスタマージャーニーマップ)とも呼ばれますが、顧客のゴールにまつわる一連の体験を顧客の視点で時間の流れに沿ってマップ化するメソッドです。視点を企業から顧客に転換し、顧客のニーズを視覚的なモデルとして共有することができます。

カスタマージャーニーマップでは、一連の体験を通して顧客がどんな結果(ゴール)を得たいのかを軸に、体験の流れに沿って、顧客の期待、行動、考え、感情がどうなっていくのかといった情報が描かれます。また、顧客が抱えているペインポイントや重要度の高いインタラクションなど、鍵となるファインディングを明らかにします。重要なタッチポイントを特定することで、自社やパートナー企業がどこに焦点を当てて顧客経験を改善し、顧客の期待をマネジメントするべきかが分かるようになります。

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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』183ページ

 

Descriptive Value Web(ディスクリプティブ・バリューウェブ)

Prescriptive Value Web(プリスクリプティブ・バリューウェブ)

自社、自社業界、更には近隣業界など、ステイクホルダーの関係性を描き出し、どのような価値交換が行われているのかを視覚的に理解するツールです。

Descriptive Value Webでは現在の状況を可視化する手法であり、顧客(ユーザー)だけでなく、競合組織、サプライヤー、流通業者など関与してくるステイクホルダーを洗い出し、それらがどのように関係しているか(価値を交換しているか)を描き出します。市場全体の仕組みとして見ていくことで、価値がどこで生まれ、どのポイントがキーとなっているか、手が加えられていない場所はどこかなどを見つけ、メンバー間の共通理解や、スコープの設定のためのツールとして活用することができます。

Prescriptive Value Webでは、プロジェクトで新たなアイデアやコンセプトを作成した際、それが市場に組み込まれれば価値交換の仕組みがどのように変化するのかを描き出します。自分たちで出したアイデアは魅力的に映りがちですが、市場の仕組みの中でそれを見ていくことで、市場にどんなインパクトがあるのかどうかを検討することができます。

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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』261ページ

 


クマー教授のコア原則では、イノベーションはシステムとして捉えるべきものだといわれています。つまり、獲得したインサイトをそのままアイデア、ソリューションに変換するのではなく、人、モノ、組織、金の動きや関係といったビッグピクチャーの中で位置づけることで、取り組むべきイノベーションの大きな方向性を明らかにすることができます。

 





Satoru Inoue
Satoru Inoue

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/エスノグラファー

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は「Offering-Activitiy-Culture Map」をご紹介します。


クマー教授が唱えるイノベーションを成功に導く4つのコア原則の1つに、「経験の周辺でイノベーションを構築する」というものがあります。製品・サービス自体から活動にスコープを広げることで、未対応のニーズを発見することができます。また、活動の中にはそれがなされるための文化や制度が既に結び付いています。常識として認知されている活動が、海外では文化の違いによって成立しなくなってくることは、想像に難くないでしょう。


リズ・サンダース教授は「デザインの初期段階でジェネレーティブデザイン・リサーチを実施する際は、フォーカスを中心に据えつつ、スコープまで探索範囲を拡げる」こと、そのために「プロジェクトのチームメンバーに、フォーカスに直接的・間接的に関連するトピックスのブレーンストーミングやマインドマッピングに参加してもらう」ことを推奨しています。「Offering-Activitiy-Culture Map」を使って、Offering(製品・サービス)からActivitiy(活動)、Culture(文化)の関連性をビジュアル化し、製品・サービスに関連した一連の活動や、影響する文化的要因を整理。そこから重要な関連性を見出すことで、イノベーションの機会を広く捉え直すことが可能になります。


oac.jpg引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』47ページ


このメソッドを使う際の進め方を以下にご紹介します。

 

Step1:製品・サービスとその特性の明確化

 図の中央に円を描き、そこに自社が現在想定している製品・サービスを置き、その属性を記入します。

 

Step2:関連する活動(経験)を描き出す

円の周りに、製品・サービスに関する活動を記入します。ここには、例えば「ひげを剃る」といった直接的な活動だけでなく、「顔を洗う」「刃を取り替える」「著名人の髭のスタイルを参照する」といった前後・周辺の活動も洗い出します。

 

Step3:文化的背景を描き出す

描き出した活動の周りに円を描き、その外側に、その活動を決定づけている、または影響しうる文化的要因や、規範、制度を書き出します。例えば、「ひげを剃る」という活動には「会社の規定」「エチケット」「社会的信用」などの文化的背景が考えられます。

 

Step4:イノベーション機会の考察

描き出されたマップを使って、製品・サービス、活動、文化的背景がどのようにつながっているかを理解します。製品・サービスから文化に向けて伸びた枝としてのまとまりだけでなく、それらのまとまり同士がどのように関連しているのかを見ることも重要です。


このように、その製品・サービスを文化的背景にまで広げて捉え直すことで、市場としてどのような機会があるのか、自社はどういった部分に取り組めそうなのか、慣行的な見方から離れてイノベーションの機会を探索することができるようになります。


Satoru Inoue
Satoru Inoue

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/エスノグラファー

01 December

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、患者・医師・薬剤師など、登場人物の多岐に渡るヘルスケアビジネスを題材に、複数の関与者を巻き込みながら新しい解決策、新しいビジネスを創出するためのメソッドについて考えたいと思います。


Convergence Map(コンバージェンスマップ)

コンバージェンスマップは、複数の業界が重なる部分でイノベーションの機会を見つける方法です。糖尿病を例にすると、近い業界の組み合わせでは糖尿病と食品産業、少し遠い業界の組み合わせでは糖尿病と旅行産業の重なりが考えられます。糖尿病の専門家と旅行産業に詳しいエキスパートを交えて二つの業界で起こっている重複点を見つけた上で、糖尿病患者・家族・医師・看護師・旅行のプランナー・添乗員などを交えたアイデエーションを行うと、医療関係者のみでは決して創出されないアイデアが生まれるだろうことは想像に難くないでしょう。


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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』41ページ

Innovation Landscape(イノベーションランドスケープ)

イノベーションランドスケープは、業界内のイノベーションの偏り具合を診断する手法です。例えば、リウマチは痛みと関節の変形が起こる病気ですが、痛みを取り除く方法や疾患が悪化しない方法について、研究(イノベーション)が進んでいます。ただ、その事実をイノベーションの偏りと認識することが出来たならば、他の方向に向けたイノベーションを考え始めることが可能になります。

関節が変形してしまってもオシャレが出来るよう、医療器具メーカーとシューズメーカーやアパレルメーカーが共同でオシャレなリハビリ靴を研究開発しても良いでしょう。そしてその先には、医師・理学療法士・ファッションコーディ―ネーターが共同して心理面からも患者をサポートする新しいエコシステムが生まれるかもしれません。


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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』35ページ

Analysis Workshop(分析ワークショップ)

リサーチを行った後に、精緻にインサイト発掘を狙うことも有益です。例えば、高齢者の運動。運動をしない方の、しない理由は何でしょうか。面倒だ、興味がない、新しいことはしたくない、ケガをするのが怖い、などはすぐにイメージが付きます。

ただ、もう一歩踏み込むと、異なるインサイトが見つかります。ゲートボール人口が減った理由の一つが、「チーム戦」だと言われています。戦略をめぐって意見がぶつかり合い、人間関係が煩わしくなってしまうということです。また、スポーツクラブでも会員の派閥化が進み、それがストレスになっているようです。すなわち、人間関係の煩わしさも、運動をしたくなくなる一因になっている可能性がある、ということです。

インサイトが異なると、解決策も異なります。煩わしい人間関係を発生させないための場・アプリケーション・コーディネーター(人材)が必要になってくるでしょう。そうした場合、スポーツトレーナーに加え、アプリ開発者、コーディネートする人材が共同で新しいサービスを開発すると良いかもしれません。



上記はあくまで一例ではありますが、これらを違う言葉で表現すると、「従来の解決策の枠から発想をズラし、新しい関与者と共にアイデアを創出すると、新しい解決策が生まれやすい」とまとめることができます。ヘルスケアビジネスの問題を解決する際も、医療関係者だけでなく、他分野の有益なエキスパートを見つけ、彼らの知見を活かす。そのプロセスが自社のイノベーションの文化レベルにまで昇華すると、イノベーションを生み出し続ける組織に変貌することになるでしょう。

この話はヘルスケア領域だけでなく、どのような業界のビジネスにも当てはまります。是非、101デザインメソッドのような思考ツールを活用しながら効率的に新しいエキスパートを見つけ、彼らを巻き込んでアイデア創出を行い、新しい解決策・新しいビジネスを見いだせるようにしていただければと思います。

Takeshi Sato
Takeshi Sato

株式会社mct
ストラテジスト

こちらはイリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クマー教授が著した『101デザインメソッド』をもとに、デザイン思考を紹介するコーナーです。同書では、段階に応じて分けられた7つのモードごとに、プロジェクト内での問題を解決するためのメソッドが紹介されています。これらのメソッドをモードに応じて使い分けていればイノベーションを生むプロジェクトが成立するかといえば、実際そうはいきません。そこにはツールとしてのメソッドだけでなく、プロジェクトを"進める力"が必要だからです。今回はこのファシリテーションについてご紹介します。

イノベーションを起こすプロジェクトには、「今までとは異なる新しいもの」をどう自社が提供できるのかを模索する段階があります。その中で、プロジェクトを推進しているリーダーやディレクターはしばしば、「アイデアは出たが目新しくない」「アイデアのレベル感が何かズレている気がする」「アイデアが発散し、時間内に収束できなかった」といった、課題に直面しているようです。
これらの多くは、ファシリテーションがうまく機能していないことが問題となっています。そのリスクを回避する目的で、プロジェクトの推進者は以下の2つのポイントを押さえながらファシリテーションを推進することが求められます。


ポイント1:発想の場を整える
サンダース教授の言葉にもあるように、アイデア発想の場は多様化しています。さまざまなステークホルダーをデザインプロセスに関与させることで、よりユーザー視点での製品やサービスを生み出そうとする試みが行われるようになった一方、デザインに関する経験が少ない人(いわば"デザインの素人")が関与することで「アウトプットの方向性がまとまらない」という事態も想定されます。ファシリテーターは彼らをサポートし、彼らの魅力を引き出してあげなければなりません。
デザインプロセスにおいて「何が問題であるのか」を捉えながら進めることは、経験者でも難しいこと。しかし、イノベーティブなアイデアを生むには、参加者自身が自分の中で問題を捉えなおし、主体的に未来のサービスや製品を作ることをできる環境を整えてあげることが重要になってきます。つまり、イノベーションにつながる魅力的なアイデアを出しやすい「発想の場」を整える役割を担います。


ポイント2:目標のマネジメント
プロジェクトには7つのモードがあり、それらモードにはそれぞれ達成すべき目標があります。

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例えば「5.アイデアを探索する(Exprore CONCEPTS)」モードにおいては、「組織が持つ従来の枠組みにとらわれず、人々のニーズを満たすための"正しい"解決策を考える」という目標が設定されます。前述した「発想の場」においても見られることですが、参加者はアイデア出しに専念するために、自ら全体的な俯瞰やアイデアの品質管理を意識することはあまりありません。それゆえ、知らないうちにいつも通りの考え方で進めてしまうことが多々あります。
ファシリテーターは限られた時間の中で、その場の成果物のクオリティや目標に対する相応しさをマネジメントする役目があります。この場合、「従来の枠を超えたアイデアとなっているのか?」「そのアイデアによって本当にニーズは満たされるのか?」といった問いを持ち続けながら、その場の成果物が目標に近づいていくことをコントロールしていきます。

さらにプロジェクト全体を見ると、7つのモードではそれぞれ意識すべきチェックポイントが異なります。例えば、以下のようなものがあります。

モード3:顧客の振る舞いや顧客が語ることは、それが真実だと感じられるか。
モード3-4:気づきは競争のレベルを変える上で、十分に興味深いものであるか。
モード4:インサイトは顧客が求める実現可能なアイデアを出す上で役立つものとなっているか。
モード4-5:モデル、原則、フレームワークは効果的にアイデア出しをサポートするか。

それぞれのモードに沿って「最も考慮するべき問い」を設定し、その目標に近づけているか確認しながら、ツールを選択・カスタマイズしていくこと、また、それらが次のモードの目標へとつながっていくようコーディネートすること。それが、プロジェクトを推進するファシリテーターのもうひとつの役割です。


ファシリテーターは、体系立てられたデザイン思考のプロセスに沿いながら、これらの役割を担うことで、よりイノベーションを起こしやすいプロジェクトにしていくことが可能です。しかし一方では、ファシリテーションはプロジェクトメンバーが同じ目標に向かって進むためのサポートツールにすぎないということも考慮しなければなりません。
第一回目の投稿でもお話しした、企業内での「イノベーション文化の醸成」が浸透し、プロジェクトメンバーそれぞれが、ファシリテーターと同じ目標を向いて進めていくことができているならば、イノベーティブなプロジェクトになるでしょう。

Satoru Inoue
Satoru Inoue

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/エスノグラファー

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先日、9月16日~18日に開催された「京都大学サマーデザインスクール2015」に参加してきました。

このサマーデザインスクールは産学官のさまざまな分野から参加者と実施者が集まり、社会の実問題に取り組む3日間のデザインワークショップです。今年は参加者・実施者・メディア等の見学者合わせて300人を超える、過去最大規模のものとなったとのことです。


今回mctはこのスクールに初めて参加し、「京都を訪れる外国人のためのサービスデザイン」というテーマで講座を開きました。

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※写真のように300人が一同にアトリウムでワークショップを行うので、(ベタな言い方ですが)会場は異様な熱気に包まれていました。

ダイバーシティにあふれるチームで参加
mctのテーマへの参加者は、インバウンド向けビジネスで起業を考えている学生やデザインメソッドに関心がある社会人、東南アジアからの留学生らで、弊社からは白根・石原・杦木・エリックの4名+インターンのインド人スタッフ1名が参加し、ダイバーシティにあふれるチームとなりました。(ちなみに全28テーマのうち、実施者に外国人スタッフがいたのは弊社が唯一でした)

参加者には3日間のワークショップを通して、弊社が普段から行っているイノベーションプロセスに沿って、101デザインメソッドを用いた観察~分析ワークを体験していただき、最終的には外国人観光客向けのサービスアイデアを考えるためのフレーム開発を行うというプログラムでした。

【1日目~2日目午前】 フィールドワーク
タイプが異なる観光地として、多くの外国人観光客が訪れるメジャーな観光地である「清水寺・三十三間堂」と、マイナーだけれども日本らしさが感じられる「智積院」で観察を行いました。
また、宿泊客の8割を外国人が占めるハイアットリージェンシー京都様のご協力を得て、キャリア10年のベテランコンシェルジュの方にインタビューを行いました。

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観察は101デザインメソッドの「POEMS」という人(People)もの(Objects)環境(Environments)メッセージ(Messages)サービス(Services)にフォーカスした観察を行いました。観察フレームが書かれた「しおり」を参加者全員に配り、それにメモを行ってもらいました。

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【2日目午後】 分析ワーク
観察により得た要素を付箋に書き出し、分析を行いました。POEMSの中でも特に「人」に着目し、タイプ分け(セグメンテーション)を行い、どのような潜在的ニーズがあるのかディスカッションしました。
ここでは日本人だけの視点ではなく、mctの外国人スタッフ、タイからの留学生の視点が加わることで、より議論が深まりました。

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分析の結果、「観光への関心が高い人ばかりではなく、関心は低いけど日常からの逃避を楽しんでいるだけの人もいるのではないか?」、「クイックに効率よく観光地をまわりたい人だけでなく、ゆったりと楽しみたい人もいるのではないか?」という視点から、『観光に対する関心の高さ』×『観光を楽しむペース』という切り口のフレームを開発しました。

【3日目】 ポスタープレゼンテーション
今回の締めくくりは、3日間の成果を大きなポスターに取りまとめ、回遊する他テーマ参加者に対して個別にプレゼンテーションを行うスタイル。
我々のチームでは、『観光に対する関心の高さ』×『観光を楽しむペース』のフレームをもとにしたデザインクライテリアと、それに紐づくアイデア例のイラストをポスターに描きだしました。
限られた時間でのポスター作成は非常にハードでしたが、受講者とmctスタッフ全員が協力して必死に追い込み、一体感に包まれながらスタンバイ完了です。
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作成したポスターを前に、受講者がプレゼンテーションを実施
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3日間という短い時間の中でで、フィールドワークから分析、アイデア出し、プレゼンテーション作成までをやりきるのはなかなかハードでしたが、参加者にとってもmctにとっても刺激に溢れた、実りの多い3日間となったと思います。

Youichi Sugiki
Youichi Sugiki

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、101デザインメソッドに沿ったイノベーションプロジェクトを進行する中で、効率的に事業設計を行うためのツール「ビジネスモデルキャンバス」をどう活用できるかについて考えたいと思います。

まず、101デザインメソッドでは、イノベーションをもたらすためのプロジェクトを7つのモードに分けて捉え、プロジェクトの状況に応じてモードを使い分けながら、イノベーションに向けた検討を進めていきます。7つのモードとは以下を指します:

モード1:目的(機会)を見出す
モード2:コンテクストを知る
モード3:人々を知る
モード4:インサイトをまとめる
モード5:コンセプトを探求する
モード6:解決策を練る
モード7:製品・サービスを実現する

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一方、ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを9つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)から構成されると見なし、各要素を検討しながら最良のビジネスモデルを組み立てていきます。

101デザインメソッドがイノベーションをもたらすためのプロセス・メソッドの視点で描かれているのに対し、ビジネスモデルキャンバスは最終的なアウトプット(=ビジネスモデル)の視点で描かれているとイメージいただければ、理解していただきやすいかと思われます。

さて、ビジネスモデルキャンバスがビジネスモデル全体の俯瞰を得意とすることから、少なくとも二つの活用が可能になります。それは、「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」と「B.新しいビジネスモデルの組み立て」の二つです。

「A.既存のビジネスモデルのベンチマーク」では、他業界のビジネスモデルのベンチマークを通して新しい機会領域を発見したり(モード1)、自社業界のビジネスモデルのベンチマークを通して各社が陥っているバイアスを見つけ出したり(モード2)することが可能です。それらのベンチマークとは、業界内各社の9つのビジネス要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係/収益の流れ/主なリソース/主な活動/パートナー/コスト)の傾向分析を指します。

「B.新しいビジネスモデルの組み立て」では、調査で得たインサイトをベースに4つの要素(顧客セグメント/提供する価値/チャネル/顧客との関係)を検討することでコンセプトやソリューションのアイデアを得たり(モード5・6)、それを9つのビジネス要素にまで展開・統合して新しいビジネスモデルの示唆を得る(モード7)ことが可能です。

以上、ビジネスモデルキャンバスの特徴が理解できると、それをイノベーションプロジェクト上の適切なタイミングで活用することが可能になります。イノベーションプロジェクトの中で情報の森に迷ったら、ビジネスモデルキャンバスを用いて全体像を整理し直してもよいでしょう。そのように各手法の強みを活かしていくことができれば、イノベーションに向けた、より精度の高いプロセスが実現できるのだろうと思います。

Takeshi Sato
Takeshi Sato

株式会社mct
ストラテジスト

07 August

こんにちは。
mctの小幡です。


このたび、「101デザインメソッド」を活用した、より効果的なエスノグラフィックインタビューと分析方法を体験して頂けるワークショップを企画いたしました。
「エスノグラフィをやってみたいけど、どんなものかよく分からない」という方はもちろん、「エスノグラフィを体験したことがあるけど、うまく活用できなかった」という方にも、新しい発見がある内容となっております。どうぞお気軽にご参加ください。


今回のテーマ:「シニアの食生活」
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・日時:2015年8月24日(月)13:00~17:30
・会場:mctワークショップ&インタビューハウス(千駄ヶ谷)
・定員:15名(先着)
・お問い合わせ/株式会社mct
tel: 03-3405-5135
東京 担当:大長(おおなが)ohnaga@mctinc.jp
大阪 担当:藤田(ふじた)fujita@mctinc.jp
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Tomo Kobata
Tomo Kobata

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト

Amazonの商業デザインカテゴリーでベストセラー1位となった『101デザインメソッド』。こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著した同著を紹介するコーナーです。今回はmctの佐藤より、イノベーションを成功に導く「4つのコア原則」をご紹介します。


1つ目の原則は、「ユーザーの経験に焦点を当てる」というもの。商品やサービスではなくユーザーの経験ベースにイノベーションを考えるという内容。「どのようなスポーツシューズを開発するか」という商品ベースの発想だけでは、ナイキプラスのサービスは生まれてこなかったはずです。

2つ目の原則は、「システムとしてイノベーションを捉える」というもの。システム(ステークホルダーやルール)の全体像を見据えてイノベーションを考えるという内容。書籍をオンラインで購入できるシステムだけでなく、倉庫・物流・パートナーシップ等のビジネスの全体像についても十分な考慮がなされていなければ、Amazonは大きく成長しなかったはずです。

3つ目の原則は、「イノベーションの文化を醸成する」というもの。社内の誰もがイノベーションを目指すマインドセットを持っていれば、常にアイデアは生まれ、大きなイノベーションにつながる確率は高まっていくはずです。

4つ目の原則は、「規律あるイノベーションプロセスを採用する」というもの。業務プロセスの中にイノベーションを呼ぶメソッドが適切に含まれていれば、イノベーションを起こす確度が高まっていくはずです。


ここで、ひとつ面白い現象をご紹介します。具体的なアイデアを出し始めると、従来の商品・サービス中心の発想に戻ってしまう方が多い、というものです。スポーツシューズそのものではなくスポーツシューズ利用者の行動全般を考えようとしても、いつの間にか、「どのようなスポーツシューズにするか」であったり、最近では「スマホを使って何かできないか」といったようなモノ中心の思考に戻ってしまう。どうやら人間という生き物は、自分が得意とする頭の使い方(≒商品やサービス中心の思考)に強い引力で引き寄せられてしまうようです。


では、その引力から解き放たれ、自由に発想を行えるようになるためにはどうすればよいか。その解のひとつに、上記の4つ目の原則(規律のあるプロセス)を活かすという考え方があります。


コンセプトを発想する時、リサーチを行う時、事業アイデアを考える時。イノベーションを目指すプロセスには様々な局面がありますが、それぞれの局面ごとにイノベーションに近づきやすいメソッドが存在します。それらのメソッドを業務プロセスに組み込み、それに(半ば強制的に)従って業務を遂行させる。そういったマネジメントも、イノベーションの確度を高めるためには必要だということです。


ひとたび成功体験が生まれると3つ目の原則(イノベーション文化)も培われ、結果、規律あるプロセスも自発的に遵守されていく・・・そんなイノベーションに向けた良いスパイラルが形作られていくでしょう。イノベーションの文化とプロセスが組織にしっかりと根付くと、組織としてのイノベーション力も圧倒的に高まっていくはずです。


そのような状態を目指し、貴社においてもまず、業務プロセスを見直されてみてはいかがでしょうか。


・・・

今後、このコーナーでは『101デザインメソッド』から有用なメソッドをピックアップし、私たちの解釈も加えた上でご紹介していきたいと思います。気長にお付き合いいただけますと幸いです。


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Takeshi Sato
Takeshi Sato

株式会社mct
ストラテジスト

04 June

mctの大長です。

6/3に英治出版さん主催で「101デザインメソッド体験セミナー@東京」開催しました。

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次回は6/12@大阪開催です。
96%は失敗に終わるイノベーションに企業、個人はどう取組むべきか?
イノベーションを促進させる重要な原則とは何か?
について共有させて頂く2時間です。お席まだ少しございます。是非!

6/12 101デザインメソッド体験セミナー@大阪
http://peatix.com/event/86662

Nobuyuki Ohnaga
Nobuyuki Ohnaga

株式会社mct
プロジェクトデザイナー/イノベーションコンサルタント

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