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20151030日金曜日、「ヘルスケア・イノベーションセミナー」を開催しました。医療業界の方だけではなく様々な業界の方に大勢ご参加いただき、ヘルスケア分野への関心の高さが伺われるセミナーとなりました。

 

■開催概要

2016年の米国ヘルスケア市場の市場規模予測は2.6兆円といわれています。これは2011年の実に1.5倍となる予測です。先進国を中心とした高齢化の進行、生活習慣病への関心の高まり、国の医療費の高騰などにより、ヘルスケアを取り巻く市場は急激に成長しています。そんな中、すでに米国を中心にヘルスケア分野での数々のイノベーション事例が生まれており、そのキーワードとなっているのが"患者中心"です。

しかし、単に患者中心で考え、患者を大切に扱うということだけではなく、患者自身が治療に積極的に参加し情報をシェアするということが"患者中心"のトレンドになっています。

 ミナー前半では今年4月にボストンで開催された「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」のご報告として"患者中心"の考え方や、グローバルでの先進事例をご紹介しました。セミナー後半では患者ジャーニーマップを使ったワークショップを実施し、具体的なテーマを通して"患者中心"について考えを深めました。

 レポートでは、セミナー前半の「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」のご報告内容を中心にお伝えします。

 

■スピーカー:カール・ケイのご紹介 

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カール・ケイは株式会社mctのコンサルタントで、国際ビジネス戦略、国際アライアンス、言語と文化の壁を克服するためのスケーラブル・ソリューション、顧客とともに目指す価値のコ・クリェーション、イノベーションのためのビジネスエスノグラフィーを専門にしています。また、外国人旅行者に対して、日本のユニークな文化に触れてもらうツアーを企画、販売するTOKYOWAYの主催もしています。https://tokyoway.jp/

 

■「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」ご報告 3つの観点

カール・ケイが、以下の3つの観点からご報告しました。

1Things designers heard patients say

2Fit the tool to the step of patients' journey

3Where are the win-wins for patient and healthcare business?

 

1Things designers heard patients say

「患者の家族や患者自身が治療に参加しコントロールする」「患者を病人としてではなく疾患という個性を持つ一人の人間として扱う」「患者が自分の病気の経験をシェアする」といった米国でのトレンドを、最新事例を交えてご紹介しました。

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例えば、「患者を病人としてではなく疾患という個性を持つ一人の人間として扱う」ではインスリンポンプをアクセサリー感覚で付けられるようにしている「hanky pancreas」(http://hankypancreas.com/)や、「患者が自分の病気の経験をシェアする」では医師が診察時のノートを患者と共有する「open notes」(http://www.myopennotes.org/)というツールをご紹介しました。

参加者の方からは、「医師がノートを患者とシェアするということは、今の日本では考えられないが、非常に興味深い取り組みだ」といった意見が聞かれました。

 

2Fit the tool to the step of patients' journey

6つのステップの患者ジャーニーに沿って、それぞれのステップで患者がどのような感情を抱き、患者の状態や感情に寄り添うためにどのようなツールが提供されているか、具体的な事例を交えてご報告しました。 

Step.1  Having symptoms

 feeling worry, denial, obsession"will this go away on its own?"

Step.2  Seeking a diagnosis

 feeling worry, frustration- takes so long, which doctor to see

Step.3  Getting a diagnosis that you believe

 feeling shock when hearing the diagnosis"We've long known that once you give people bad news, they often don't remember half of what they're told after that,"

Step.4  Making sense of it & finding a plan

 feeling grieving for the future you imagined but lost; loneliness

Step.5  Optimizing and adjusting

 feeling found a doctor, feel on a path, a little more in control

Step.6  Living with it

 feeling The "New Normal" (depends partly on the illness)Finding the "silver lining"

例えば、「Step.2  Seeking a diagnosis」で患者がどのようなドクターに掛かるべきか長時間悩みフラストレーションを溜めているという状態に対して、米国のDana Farber病院では、医師の紹介ビデオをホームページで閲覧できるようにしているという事例を紹介しました。http://www.dana-farber.org/

 

 3Where are the win-wins for patient and healthcare business?

 "患者中心"は患者だけではなく、ヘルスケアビジネスを提供する側にとってもメリットがあることを以下の点からお伝えしました。

Better compliance- more sales, lower cost

Better outcomes

Fewer lawsuits

Access to more data, faster

Report by NHS in UK estimates that stronger patient engagement could lead to savings of nearly £2 billion by 2020-21, i.e. around 10 per cent of the NHS England target saving.

Doctors will still provide treatment, but they won't be doing very much diagnosing or monitoring; that will be done by patients going forward. 

例えば、先ほどご紹介した「open notes」というツールは、患者の治療に対する満足度を高めるだけではなく、医師が患者に伝えたことの記録を残すことによって医療訴訟のリスクを下げることにもつながります。

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患者ジャーニーマップ体験ワークショップ概要

後半は、希少疾患の子供を持つ母親をテーマに、母親のジャーニーマップを描くワークショップを体験していただきました。希少疾患の子供を持つ母親の気持ちは想像することも難しいですが、カスタマージャーニーマップを用いて感情の流れを捉えることにより、深く感情移入して積極的な意見交換ができました。参加者の方からは、「口ではこう言っていたけど、それって結局こう思っているんじゃないか?」や「男性として母親の気持ちを理解するのは難しい。」と言った意見が聞かれ "患者中心"を体感しながら考える、とてもよい機会になったと思います。

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「患者ジャーニーマップ」について詳しく知りたい、社内で実施したい方はお気軽にお問い合わせください。

また、来年4月にも「Improving health experiences through technology & design」というテーマで「HEALTH EXPERIENCE REFACTORED CONFERENCE」が開催される予定で、mctからはカール・ケイが参加します。次回も報告会を開催しますので、お楽しみに!
Shimpei Tsurumori
Shimpei Tsurumori

株式会社mct
エクスペリエンスデザイナー/ストラテジスト

今日、多くの業界でコ・クリエーションが導入されています。そして遂に、ヘルスケア分野の製品、環境、サービスのデザインにも影響を与え始めるようになりました。この事実は、「へルスケアプロジェクトから優れたデザインが生み出されれば多くの人の生活の質を向上させる可能性がある」という点で重要なトレンドといえます。プロセスにコ・クリエーションが導入される時期が早ければ早いほど、製品、環境、サービスのデザインと開発に与える影響は大きくなります。

 

ヘルスケアプロジェクトにコ・クリエーションを導入するメリットとは?

ヘルスケアプロジェクトは複雑で、さまざまな関係者が関与します。ヘルスケアプロジェクトにコ・クリエーションを導入するには多くの時間とリソースが必要になりますが、最終的にもたらされるメリットは計り知れません。デザインのフロントエンドにコ・クリエーションを導入すれば、ヘルスケアプロジェクトの最終結果に次の3つのメリットがもたらされます。一つ目は、関係者をコ・クリエーターとしてプロセスに参加させることで、彼らのニーズを満たす最終結果が得られる可能性が飛躍的に高まります。二つ目は、関係者がコ・クリエーターとして積極的にプロセスに参加し、何らかの役割を果たすことで、デザイン過程に主体的に関われるようになります。当事者感覚は自信につながり、関係者の仕事の仕方に良い影響を与えます。三つ目は、ソリューションに対し当事者感覚があれば移行期間が過ごしやすくなります。ここで言う移行期間とは、新しい製品、環境、サービスの扱いに慣れるまでの期間のことです。

 

ヘルスケアデザインのフロントエンドにおけるコ・クリエーション:ショート・ケーススタディ

通常、新しい病室をデザインする際には患者、患者の家族、看護師のニーズを考慮しなくてはなりません。しかし、医師、画像検査技師、付添人、栄養士、清掃作業員、修繕業者など、病室で働く人はほかにも大勢います。私は現在、オハイオ州立大学の研究者たちと共にコ・クリエーション・プロジェクトで働いて、病室で働く人や過ごす人、全員のニーズを調査しています。プロセスに参加する関係者は背景の異なる23ものグループから募っています!このプロジェクトは、デザインプロセスのフロントエンドにおける究極のコ・クリエーション事例です。

 

現在プロジェクトはコ・クリエーションの段階にあり、関係者の小グループに参加してもらい、理想的な病室を作っています。参加者には病室に設置するすべての設備の模型を与え、設置場所を決めてもらいます。部屋の設備模型はすべて実物大です。壁面はすべてマジックテープで覆われているので、関係者は設備模型(コンセント、棚、照明スイッチ、TVなど)を正確な場所にくっ付けることができます。バスルームは部屋のどこにでも移動できます。壁、シンク、トイレのすべてにキャスターが付いているからです。現在は、30回におよぶ実物大の模型を使ったコ・クリエーション・ワークショップの結果を分析し、病室で働き、療養し、訪問するすべての人たちのニーズを満たす、病室デザインのガイドラインを作成しています。

 

フロントエンドへのコ・クリエーション導入計画で考えるべきこととは?

デザインプロセスのフロントエンドへのコ・クリエーション導入計画段階で、組織のトップレベルの人材を巻き込むことができればベストです。組織のあらゆるレベルそしてポジションにある関係者と協力することが望ましいからです。また、プロセスの初めから終わりまで参加できる専門のコ・デザイナー・グループも必要です。コ・デザイナーとして参加したいという意欲のある人たちがいればベストですね。興味のない人やプロセスに疑問を抱いている人にコ・クリエーション・プロセスへの参加を強制してはいけません。

 

ヘルスケアプロジェクトのフロントエンドへのコ・クリエーション導入は繰り返し行われるプロセスです。コ・クリエーションのベストな形を探り出すには、多くの時間と試行錯誤が必要です。プロセスを可視化して、コ・クリエーター全員が自分たちが一緒に成し遂げたことを見えるようにすることが重要です。また、コ・クリエーションの取り組みを組織内の関係者全員に知らせることも重要です。プロセスを共有することで、さらなる関係者を発掘し、コ・クリエーション・ワークショップに参加してもらうのです。関係者全員にコ・クリエーターとしてプロセスに参加してもらうには、先進的な通信テクノロジーやソーシャル・ネットワーキングが役立つでしょう。



コ・クリエーションの未来とは?

今後も、ヘルスケアデザインにおけるコ・クリエーションの取り組みは増え続けていくでしょう。事実、Philips社は最近、オランダのアイントホーフェンに初の「HealthSuite Labs Co-creation Center」を開設したと発表しました。Philips社のプレスリリースによると、同センターは、「ヘルスケア専門家や一般開業医が、患者やさまざまな業界のビジネス専門家とチームを組んで、コ・クリエーションを通じて総合的なヘルスケア・ソリューションを構築すること」を目的としています。Philips社は今後も、アメリカやアジアを含む全世界にコ・クリエーション・センターをオープンしていく予定です。
Liz Sanders
Liz Sanders

MakeTools
代表

02 December

Co-creation is in use across many different industries today and it has finally started to impact the design of healthcare products, environments and services. This is an important trend since good design in healthcare projects has the potential to improve the quality of life for many people. The earlier in the process that co-creation is applied, the more impact it can have on the design and development of products, environments and services.

 

What are the merits of using co-creation on healthcare projects?

Healthcare projects are complex and many different stakeholders can be involved. Co-creation in healthcare projects takes a lot of time and resources but the payoff at the end can be enormous. The use of co-creation in the front end of design can improve the end results of healthcare projects in three ways. First, by involving the stakeholders as co-creators in the process, there is a far better chance that the end results will meet their needs. Second, when the stakeholders are actively involved as co-creators they will have ownership of what is designed since they will have played a role in the process.  Feelings of ownership can lead to feelings of empowerment that will have a positive impact on how the stakeholders do their jobs. Third, when people have ownership of the solution it is easier for them during the transition period, i.e., the time period during which people learn how to use the new product, environment or service.

 

A short case study of co-creation in the front end of healthcare design

The design of new hospital rooms typically takes into account the needs of patients, family members and nurses. But there are many other people who work in the hospital room such as doctors, imaging technologists, sitters, dieticians, cleaners, repair people, and many more. I am working on a co-creation project now with other researchers at The Ohio State University where we are investigating the needs of all the people who work in and/or stay in the hospital room.  We have invited people from 23 different stakeholder groups to participate in the process! This is an example of extreme co-creation in the front end of the design process.

 

We are now in a co-creation phase where we invite small groups of stakeholders to work together to create their ideal hospital room. We provide them with all the components that go into the patient room and let them decide where things should go. Everything in the room is full size. The walls are all covered with Velcro so that the stakeholders can stick components (such as outlets, shelves, light switches, TV, etc.) exactly where they want them to go. The bathroom can be moved to any place in the room since the walls, the sink and the toilet are all on wheels.  We are now in the process of analysing the results of 30 full-scale, co-creation workshops to develop guidelines for the design of hospital rooms that will meet the needs of all the people who work, heal, and/or visit in these rooms.

 

What are things to think about when planning to use co-creation in the front end?

When planning to use co-creation in the front end of the design process it is best to have buy-in at the top level of the organization since you will want to collaborate with stakeholders from all levels and positions in the organization.  You will need a group of dedicated co-designers who are able to stay involved in the process over time. It is best to work with people who are eager to be involved as co-designers. Coercing people to take part in a co-creation process when they are not interested in doing so or when they are skeptical about the process should be avoided.

 

Using co-creation in the front end of healthcare projects will be an iterative process.  It will take time and many trials to figure out how best to make it work. It is important to visualize the process so that all the co-creators can see what they have accomplished together. It is also important that the co-creation effort be communicated to all interested parties in the organization. By sharing the process you can identify additional stakeholders to bring into the co-creation workshops. Advanced communication technologies and social networking can help to keep all interested stakeholders involved in the process as co-creators.

 

What can we expect in the future?

We can expect to see more co-creation efforts emerging in healthcare design in the future. In fact, Philips recently announced that it has opened its first "HealthSuite Labs Co-creation Center" in Eindhoven, the Netherlands. According to the company, the centers will "allow healthcare experts and general practitioners to work together in teams, with patients as well as business experts from multiple fields, to co-create and implement integrated care solutions" (from the press release). Philips plans to open more co-creation centers around the world, including some in the US and Asia. 

Liz Sanders
Liz Sanders

MakeTools
代表

01 December

こちらは、イリノイ工科大学デザインスクールのヴィジェイ・クーマー教授が著したデザイン思考の教科書、『101デザインメソッド』を紹介するコーナーです。今回は、患者・医師・薬剤師など、登場人物の多岐に渡るヘルスケアビジネスを題材に、複数の関与者を巻き込みながら新しい解決策、新しいビジネスを創出するためのメソッドについて考えたいと思います。


Convergence Map(コンバージェンスマップ)

コンバージェンスマップは、複数の業界が重なる部分でイノベーションの機会を見つける方法です。糖尿病を例にすると、近い業界の組み合わせでは糖尿病と食品産業、少し遠い業界の組み合わせでは糖尿病と旅行産業の重なりが考えられます。糖尿病の専門家と旅行産業に詳しいエキスパートを交えて二つの業界で起こっている重複点を見つけた上で、糖尿病患者・家族・医師・看護師・旅行のプランナー・添乗員などを交えたアイデエーションを行うと、医療関係者のみでは決して創出されないアイデアが生まれるだろうことは想像に難くないでしょう。


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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』41ページ

Innovation Landscape(イノベーションランドスケープ)

イノベーションランドスケープは、業界内のイノベーションの偏り具合を診断する手法です。例えば、リウマチは痛みと関節の変形が起こる病気ですが、痛みを取り除く方法や疾患が悪化しない方法について、研究(イノベーション)が進んでいます。ただ、その事実をイノベーションの偏りと認識することが出来たならば、他の方向に向けたイノベーションを考え始めることが可能になります。

関節が変形してしまってもオシャレが出来るよう、医療器具メーカーとシューズメーカーやアパレルメーカーが共同でオシャレなリハビリ靴を研究開発しても良いでしょう。そしてその先には、医師・理学療法士・ファッションコーディ―ネーターが共同して心理面からも患者をサポートする新しいエコシステムが生まれるかもしれません。


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引用:Vijay Kumar『101 Design Methods』35ページ

Analysis Workshop(分析ワークショップ)

リサーチを行った後に、精緻にインサイト発掘を狙うことも有益です。例えば、高齢者の運動。運動をしない方の、しない理由は何でしょうか。面倒だ、興味がない、新しいことはしたくない、ケガをするのが怖い、などはすぐにイメージが付きます。

ただ、もう一歩踏み込むと、異なるインサイトが見つかります。ゲートボール人口が減った理由の一つが、「チーム戦」だと言われています。戦略をめぐって意見がぶつかり合い、人間関係が煩わしくなってしまうということです。また、スポーツクラブでも会員の派閥化が進み、それがストレスになっているようです。すなわち、人間関係の煩わしさも、運動をしたくなくなる一因になっている可能性がある、ということです。

インサイトが異なると、解決策も異なります。煩わしい人間関係を発生させないための場・アプリケーション・コーディネーター(人材)が必要になってくるでしょう。そうした場合、スポーツトレーナーに加え、アプリ開発者、コーディネートする人材が共同で新しいサービスを開発すると良いかもしれません。



上記はあくまで一例ではありますが、これらを違う言葉で表現すると、「従来の解決策の枠から発想をズラし、新しい関与者と共にアイデアを創出すると、新しい解決策が生まれやすい」とまとめることができます。ヘルスケアビジネスの問題を解決する際も、医療関係者だけでなく、他分野の有益なエキスパートを見つけ、彼らの知見を活かす。そのプロセスが自社のイノベーションの文化レベルにまで昇華すると、イノベーションを生み出し続ける組織に変貌することになるでしょう。

この話はヘルスケア領域だけでなく、どのような業界のビジネスにも当てはまります。是非、101デザインメソッドのような思考ツールを活用しながら効率的に新しいエキスパートを見つけ、彼らを巻き込んでアイデア創出を行い、新しい解決策・新しいビジネスを見いだせるようにしていただければと思います。

Takeshi Sato
Takeshi Sato

株式会社mct
ストラテジスト

9月26日土曜日、一般社団法人グッドネイバーズカンパニーと弊社が共催したイベント「ケアクリ会議」が日本橋にて開催されました。ヘルスケアデザイン領域において、現場で活躍されている実践者が全国から集い、語り合い、大成功を収めた本イベントの熱い一日をご紹介します。

※今後、mctがお届けするヘルスケアデザイン関連イベントとして、米国で開催された「ヘルスケアデザイン国際カンファレンス」のご報告イベントを10月30日(金)に予定しております。この記事の最後で、詳細をご紹介しています。

ケアクリ会議とは?
医療・介護・福祉などケアの現場で活躍する人材と、デザイナーやクリエイター、企業内イノベーター、社会起業家などのクリエイティブ人材が「ケアとクリエイティブ」について共に学び、語り、考える、参加型のトークイベント。10年後の医療・介護・福祉の現場が、創造的な健康課題の解決、価値創造の場に変化することを目指し、スタートしました。

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今年のテーマは「ケアの課題をクリエイティブにプロデュースする方法!?」。
当日は、「じゃあ、どうやって?」の部分を、3人のゲストスピーカーから話題提供していただき、参加者同士の経験や問題意識を共有。対話を通じてヘルスケアの現場課題を創造的に解決する方法を探索します。

《ゲストスピーカー》
1.障害者 X バラエティ
NHK障害者情報バラエティ「バリバラ」プロデューサー  日比野 和雅 さん
2.認知症介護 X 演劇
「老いと演劇」OiBokkeShi主催 俳優/介護福祉士   菅原 直樹さん
3.子どもの格差 X インクルーシブデザイン 
一般社団法人ピーシーズ代表 児童精神科医  小澤 いぶきさん

Story 1.
つっこむ、笑う、考える。
障害者のリアルを描くのに、バラエティの手法は相性がいい。

NHK障害者情報バラエティ「バリバラ」プロデューサー  日比野 和雅 さん

「バリバラ」は障害者の恋愛、仕事から、スポーツ、お笑いまで、日常生活のあらゆるジャンルに果敢に切り込む「バリアフリーバラエティ番組」。

◯街中のなんちゃってバリアフリーを検証する「バリバラ珍百景」
◯寝たきりコント職人が障害者あるあるネタで競う「SHOW-1グランプリ」
◯障害者モデルがランウェイを歩くファッションショー「バリコレ」

など、ユニークな企画を通じて、障害者のリアルな姿を発信しています。

かつて「きらっといきる」という障害者のドキュメンタリー番組を手がけていた日比野さん。
出てくるのは一部の頑張っているエリート障害者ばかり、という視聴者の指摘をうけ、番組改革に向けて新たな表現を模索します。ドキュメンタリーでは、どうしても課題と向き合い奮闘する主人公を追いかける感動モノになってしまう。一方で、制作スタッフの間では「障害者施設の運動会が面白いんですよ」「ヒッチハイクを始めた面白いヤツがいて」「番組では放送されない取材現場では、もっと面白いコトが起こっている」との声多数。この面白さを伝えるにはドキュメンタリーよりも、むしろそのままバラエティのほうがいいのでは?
"障害者を笑ってはいけない"というタブーを超え、"障害者と笑おう!"
こうした発想から「バリバラ」の挑戦がスタートしました。

やってみてわかったのは、障害者とバラエティ手法は相性がいい、ということ。面白く描くのではなく、単純に課題があったら、そこにつっこむ。そして笑う。笑った後で一緒に考える。この流れを作ってしまえば、誰もが巻き込まれ、障害者との距離感も縮まる。
境界のあちら・こちらを超える力は『笑い』にあり!
日比野さんの軽快なトークに、会場も終始笑いに包まれていました。

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Story 2.
老い×ボケ×死を受け入れる。
認知症の方と、今この瞬間を楽しむために「役」を演じる。

「老いと演劇」OiBokkeShi主催  俳優/介護福祉士 菅原 直樹さん

OibokkeShi(オイボッケシ)は岡山県和気町で、菅原さんと地元住民たちが作った劇団。
演者は認知症の妻を介護するお年寄り、商店街の店主など街に暮らす人たちです。

認知症徘徊演劇「よみちにひはくれない」の舞台は和気町の街。お客さんは劇場に座って舞台を見るのではなく、まちを徘徊する認知症役の人の後をついてまわる。そうすることで、認知症の方の気持ちを追体験することができる。また、「老いと演劇」ワークショップでは、介護職員にむけて、認知症の方の世界観を読み解き、その中で役割を見つけて演じる、という手法を伝えています。

元々特別養護老人ホームで職員をしていた菅原さん。認知症の方が困っていることは「忘れる」ことではなく「ひととの関係性が壊れてしまう」ことなのだそうです。食事・入浴・排泄の介助は大切だけれど、やはり人間というのは役割がほしいのではないか。そこで、認知症の人や周囲の介護者の方が"今、この瞬間を楽しむ"ために、和気町という舞台の上でそれぞれの役割を見つけてあげる。菅原さんがやっていることは、どこか演出家の仕事と似ているそうです。

ケアクリ会議当日は、菅原さんによるミニ演劇ワークショップを開催。参加者に台本や役割が与えられ、演劇を通じた認知症の方との関わり方を体感しました。ボケを正すのではなく、その方のもつ可能性に寄り添う。"遊びリテーション"の極意に触れ、会場は大盛況でした。

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Story 3.
貧困、虐待、育児放棄。
逃げ場のない子供たちに「ただいま」といえる安心基地を。

一般社団法人 PIECES(ピーシーズ)代表 児童精神科医  小澤 いぶきさん

病院で待っていても何も変わらない。児童精神科医の小澤さんは、医療現場を飛び出し、地域住民の方を巻き込みながら、貧困や虐待に苦しむ子供たちに「家庭以外で安心して過ごせる居場所」を創る活動をしています。

◯一般家庭の食卓を地域に開き、子供たちみんなで安心してごはんを食べられる家(足立区)
◯不登校の子供が集まるプログラミング教室(足立区)
◯地域の先輩ママが助けてくれる10代ママの子育て支援コミュニティ(豊島区)
◯多世代型本気のドッジビースポーツ大会+運動後のピアカウンセリング(豊島区)
◯高校生ユースワーカー育成事業:地元のお兄さんお姉さんによる子供向け企画づくり(都内高校と提携)

家庭環境に恵まれなかった子供たちが、"家族以外の地域の大人と関わりながら安心して育つことができる関係性"を一つの単位とし、PIECESの活動はアメーバ式に発展しています。

生まれる環境は選べない。過酷な状況でその日暮らしの生活を強いられ、生きる意味、働く意味を見出せなかった子供たち。「安心基地」で仲間と過ごし、その中で役割を与えられ、徐々に心を開いていく。地域の大人に見守られながら、プログラミング、アート、スポーツ、ファッションなど熱中できるものに出会い、自分で自分のことを決められるようになっていくそうです。

ケアクリ参加者の疑問は「いったいどうやって地域の一般家庭や大人を巻き込んでいるのか?」
小澤さんによると、"おせっかいおばちゃん"のような社会的資源が各地域に必ずいるそうです。
また、PIECESがコーディネーターとして、企画の作り方、子供たちとの関わり合い方を一般の方にアドバイスしていく。その中で、大人たちも自分に求められている役割を学び、自身の居場所を見出していきます。

「助けてあげたいけれど、どうしたらいいのかわからない」大人たちが、ケアの現場に参加できる仕組みを創る。診断、治療、カウンセリングといった医療の枠を飛び越えた小澤さんの本質的アプローチに学ぼうと、参加者から絶え間なく質問が投げかけられていました。

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原石を見つけ、舞台に上げ、演出する
障害、老い、貧困・・・一見取り扱いにくい問題を抱える人々の中に原石を見つけ、ひとりひとりの物語を紐とき、舞台と役割を与える。「番組企画」、「演劇公演」、「教育プログラム」と単位も対象も異なりますが、3人のゲストスピーカーに共通していたのは『一つの舞台を演出する敏腕プロデューサー』であることでした。

医療現場における診断・治療という文脈を越え、生活環境の中で利用できる資源を有機的に結びつける。支援する側・される側の境界を越え、舞台の中でそれぞれが役割を担う。

当日の参加者は、看護師、理学療法士、栄養士、保健師、患者当事者の方から医療コンサルタント、医療機器・製薬メーカーの方、デザイナー、WEBクリエイターまで様々なバックグラウンドの方がいらっしゃいました。「自分になにができるか?」「どうしたら一歩を踏み出せるのか?」「誰にどうやって協力してもらえばよいか?」など、参加者もそれぞれの体験を共有しながら、熱い議論が交わされました。参加者のひとりである医師の方が、「今日はお話したひと全員から学びがあり、感動して涙が出そうです」とおっしゃっていたのが印象的でした。

本イベントの発案者であるグッドネイバーズカンパニー代表・清水愛子さんは、元々エスノグラフィやデザインリサーチのエキスパートとして企業で活躍されていました。現在は、ヘルスケア領域における専門性を高めるべく医学部に在籍中という異色の経歴の持ち主。弊社のヘルスケアデザイン事業における提携パートナーとして、昨年は「ヘルスケアデザインセミナー/北米健康・医療系イノベーション組織の視察報告」「ヘルスケアデザインワークショップ/高齢者の見守りとオープンサービスイノベーション」などでご協力いただいています。

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弊社では引き続きヘルスケアデザイン関連イベントを企画しています。
直近では、米国で開催された「ヘルスケアデザイン国際カンファレンス」のご報告イベントを予定しており、グローバルトレンドと先進事例を日本のみなさまにお届けします。
「ヘルスケア課題の創造的解決」に関心があり、参加を希望される方は、弊社担当者までご連絡ください。

患者中心で考える「ヘルスケア・イノベーションセミナー」
§1.「HXR:HEALTH EXPERIENCE REFACTORED 2015」のご報告
§2. 患者ジャーニーマップ 実践ワークショプ

日時:2015年10 月 30 日(金)15:00 ~ 18:00
会場:株式会社大伸社 本社ビル B1 スタジオ (渋谷区千駄ケ谷 2-9-9)
定員: 20 名
参加費:5,000 円(税抜)

お申し込み:下記コンタクトフォームからご連絡をお願いいたします。
https://www.daishinsha.co.jp/mctinc/contact/index.html


関連リンク:
清水さんのグッドネイバーズカンパニー
http://gnc.or.jp/

日比野さんの公演
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ss/kouza/3_h24/3.html

バリバラHP
http://www.nhk.or.jp/baribara/

菅原さんの記事
http://www.theaterguide.co.jp/feature/artist/vol_11/

小澤さんのインタビュー記事
http://greenz.jp/2015/04/08/diversity_inclusion_children/

Wakako Kitamura
Wakako Kitamura

株式会社mct
エスノグラファー/サービスエクスペリエンスデザイナー

27 August
2015年08月27日 13:28

9/26 ケアクリ会議 Vol.2

こんにちは、mctの大長です。

医療・介護・福祉などケアの現場で活躍する人材と、デザイナーやクリエイター、企業内イノベーター、社会起業家などのクリエイティブ人材が出会うイベント「ケアクリ会議」のご案内です。

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こちらは、「ケアとクリエイティブ」について共に学び、語り、考える、参加型のトークイベントで、今年のテーマは「ケアの課題をクリエイティブにプロデュースする方法!?」。当日は、「じゃあ、どうやって?」の部分を、3人のゲストスピーカーから話題提供していただき、参加者同士の問題意識の共有の場や、クリエイティブな課題解決の方法を探る対話の場など、盛りだくさんの内容です。

ご興味ある方は是非!

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ケアクリ会議2015
2015月9月26日(土)13時~19時
東京都中央区日本橋 日本橋ライフサイエンスビル201大会議室にて
https://www.facebook.com/events/1616723031913649/

Nobuyuki Ohnaga
Nobuyuki Ohnaga

株式会社mct
プロジェクトデザイナー/イノベーションコンサルタント

21 July
2015年07月21日 08:42

Patient Journey Workshop

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こんにちは、mctの大長です。
7/15にインフロント様主催で「Patient Journey Workshopセミナー」を開催しました。

セミナー前半では、人間中心デザインの考え方やマインドセット、医療業界における先進的な取り組み事例をご紹介。

後半では、実際の患者さんの取材映像を通じて、患者さんが疾患に気づいてから今の生活に順応していくまでの行動、感情・モード、関連する人、行動を促進/阻害する要素を、マップ上に洗い出し、患者さんの経験を改善していくためのポイントについて議論いたしました。

こちらのワークショップ型セミナーは、お客様企業へ訪問しての開催も可能です。
ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
mctの最新セミナー情報

Nobuyuki Ohnaga
Nobuyuki Ohnaga

株式会社mct
プロジェクトデザイナー/イノベーションコンサルタント

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